「新妻先生、先生がおっしゃっていた“戦わずして勝つ”ということがやっとわかりましたよ」日本を離れイギリスに渡り5年、日本人が異国で勝負することの難しさをW社長は感じていました。
元はと言えば、このW社長、とても頑張り屋な方です。ご相談に来られた当時は「私は頑張ることだけが取り柄です」と仰っていました。
がんばってがんばって売り上げを作っていく日々。ライバル会社にもマンパワーで勝ちを取りに行くエネルギッシュな姿は素晴らしいですが
「もう私、フラフラで倒れそうです・・」当時は「もっと動ける自分になりたい」と、弊社の門をたたかれました。
しかし、私はこうお伝えさせていただきました。
「もっと動けるようになるのではなく“戦わず勝つ”存在力がほしくありませんか?」
W社長は豆鉄砲を喰らったような顔をして言いました。
「え?え?先生どういう意味でしょうか・・」
私は答えました。
「『三位一体』についてご説明します」
どんな規模の会社でも押さえておくべき「存在力」とは
あなたが中小企業の社長であっても、個人で活躍する個人事業主であっても、強いキャリアを築こうとするのならば、これはお伝えしなければいけません。
企業のでき、事業のできは「100%社長次第」です。
これが根幹。
基礎中の基礎。
こう言うと、社長の「知識や経験・経営センス」のことを言っているのかな?と思う方は多いかもしれませんが、今回は、その知識や経験を活かすための「土台」の方を指しています。
あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、あなたの『存在力』のことです。
つまり優先順位として「存在力を上げる」ことを先に考えなければいけません。「知識を身につける」ことはその後にくるものなのです。
あなたの存在力が弱っている状態では、何を勉強しても、どう策を練っても「まだ足りない」と後手に回ることになります。
樹木の「枝葉」(知識・経験)ばかりが増えてしまい、あなたの「幹」(存在力)が細いままでは「果実」(事業成果)が実る前に、存在がその重さに耐えきれなくなってしまうのです。
社長の存在力がそのままキャリアと事業の力になります。
そしてこの存在力の概要が、あなたの中にある『三位一体』です。
1、「受動的な側面」
2、「能動的な側面」
3、「創造的な側面」です。
社長はみずからの存在力を形づくる、この3つの側面を明確に意識化、分類して、「三位一体」の力を適宜使い分けられるようにします。
あなたはトンチンカンな発信をしていないか?
「受動的な側面」=「受信力」
あなたの中の「受信」の側面が不安定ならば、あなたの中に取り込まれる情報素材は、実際に起きてることではなく、先入観によって色付けされた独りよがりの情報になっています。
するとそれは発信に影響します。
「能動的な側面」=「発信」は、ベースとなる情報素材が濁っているので、当然「的を得ていない」トンチンカンな発信となります。
最初にボタンのかけ違えを起こしている状態です。
これではいくら広告費をかけても思ったような成果は上がらない・・外注したのに機能しない、そんなことが起こりかねない状況です。
受信⇄発信の「意識化」が不明瞭な状態では、創造性や新規企画には当然求められるエネルギーが足りておらず、アイディアは企画倒れになりやすくなります。
これらが続くことで「成果が出ない…」「もっとがむしゃらに頑張らないと」「こんなことでうまくいくわけ・・」と内心で士気を下げていきます。これでは上手くいくほうがおかしい。
こうして、あなたの受信力が弱いと、あなたの社会への影響力はどんどん低くなってしまいます。
あなたの発信力、影響力はもっと上がる
それではどのようにあなたとあなたのキャリアの幹を太く強くしていけば良いのでしょうか。
それが『受信』『発信』『創造』の3つの力。これらを『三位一体』として機能させることが、社長の社頭としての命題となります。
事業・組織は本来、それがたとえ数百万〜100億円といった、どんな規模の企業であったとしても、いずれにしても社長の「存在力=三位一体」がスケールしたものに過ぎません。
だからこそ、あなたが3つの力の研鑽をし、存在力の向上に身を投じることは「影響力の波及効果」を考えたときに、必須事項となるのです。
この影響力の話は、なにも社内や身近な範囲だけに留まるものではありません。つまり、取引先との関係やもっと大きな社会的な範囲にまで及びます。
あなたが三位一体として機能させるべき『受信』『発信』『創造』
『受信』の機能は
・社会情勢の把握
・マーケットリサーチ、です。
ビジネスを構築していく上では「お金の匂い」を嗅ぎ分ける力や、「引き際」を見極めることが重要です。
あなたの「受信力」が高まれば、当然高い角度からのマーケットリサーチが可能になります。即ち“先見力”こそが社長の受信力の真骨頂です。
よって、この3つの中で、一番初めに着手すべきなのが「あなたの受信」する側面です。受信力から変化させていくことで、他の2つもより良くなっていきます。
例えば、小さい頃に見た映画を大人になってから久しぶりに見たときに「受け取り方が変わっていた」という経験はありませんか。自分自身の社会的な経験が増え、映画から受け取る印象が「変化」しているのです。
子供から大人になるということは姿形の変化ではなく、このような「意識の変化=受信力の変化」によって感じられることが多いのではないでしょうか。
子供から大人へという変化以上に、さらに「有益な情報」を映画……ではなく「狙ったマーケット」から、他社よりも先んじて察知することが可能となります。
みずから狙って「重要な情報を先手で獲得」することができる「能動的な受信力」を確立するのです。
それに対して『発信』の機能は、
・広告宣伝
・広報
・キャンペーン
・SNS活用
等を指します。
時代やテクノロジー、ニーズの変化に対して、スピード感を持って自社サービスを展開・提案していく推進力が必要です。「社長の発信力」がスケールして広告宣伝、広報、キャンペーンとなります。
受信と発信の間で、何があなたの事業として展開できるか、臨機応変に自社の商品・サービスを最適化する必要があります。当然、受信力が高ければ、適切に発信ができることでしょう。
そして3つ目の『創造』
・企画力
・商品力
・サービスの開発と改良、改善
・新しいマーケティング戦略
・営業戦略の考案
・人事、となります。
活発な受信と発信の繰り返しの中で生じたアイディアが、次の商品・サービス開発の源泉、顧客の創造へと繋がります。これらが「創造力」となります。
上記は事業展開を考える上であまりにも基礎的な事柄なので「新妻さん、そんなことは知っていますよ」と仰る方は多いのですが、それがどうもご自分の事業となると平気で「独りよがり」をしてしまっている、そんな経営者を何人も見てきました。
社長が各部署に割り振る「受信」「発信」「創造」と、それぞれの関連性を明確に自己理解しているほど、その権限を付与されたセクションは一貫性をもって役割を全うすることができます。
受信力は高めていくと『先見力』になる。そして発信力と創造力という三位一体の2つの側面を高めていくと、この2つは合わさって『権威』になる。権威を持ったあなたのビジネス展開というのは、高い影響力を有することになるのです。
「権威」と「先見力」を有したあなたは、こうして「戦わずして勝つ」状態を手に入れるのです。
「戦わずして勝つ」そんな余裕感と自由感を得るために
存在力を高めてこられた冒頭のW社長は、言葉をしぶります。
「新妻先生、ちょっとこれ言っていいかわからないんですけど・・」
私は続けます。
「どうされました?」
W社長
「実際だいぶいろんなことが見えるようになってきてですね、正直・・あの・・“世の中ザル”かなって」
私はそれを聞いて思わず笑ってしまいます。
「そうですよね、実際、抜け道がわかるんでね」
W社長
「いや、本当そうなんです!こんな言い方良くないかもなんですけど…あんなに必死でアップアップしてたのに、人間関係でも、世間のことでも、ライバル会社とかお金の流れのこととかも『ああ、そうくるのね、じゃあ私はこうするわ〜っ』て感じで。でも、もうちょっと上行きたいですけどね」
新妻
「いやーよかったですよ、余裕出てくるんですよね。色々見えてくるから、時間も空きますし」
W社長
「時間が空いたといえば、この前娘の話を聞いてあげてたとき「お母さん暇なの?」って言われて。あー今までごめんって思ってトイレで泣きそうになりまして」
新妻
「それはいい話ですね」
W社長
「後半はいい話しちゃいました。数打ちゃ当たるはもうしませんよ。なんでも有限だから」
終始楽しそうに笑いながら話してくれたB社長には「余裕感」が感じられます。
W社長は少しこんなことをいうのは恥ずかしいという具合でしたが、わたし自身も大いに納得させられたお話でした。
実際、存在力を高めていけば、あなたの目にもW社長と同じように「あんなに大変だった世の中」のあらゆることが「とても簡単にすり抜けられるところ」として映るでしょう。
ビジネス展開というものは、「一世一代の一発勝負」によって勝ち取るというよりも、然るべく準備をし、万全の状態で「余裕のある事業展開」によって「戦わずして勝つ」。
こんな風にして得られる「必然の勝利」の方が圧倒的に多いわけです。経営者こそ、そうであるべきではないでしょうか。事業で博打を打ちたい経営者はいないはずです。
長(おさ)として今のあなたには世の中がどのように見えているでしょうか?そしてあなたは、自身の存在力を引き上げるための具体策に取り組んでいますか?
まず「戦わずして勝つ」ことができる存在力を手に入れてしまいましょう。そうして十分に太くなったあなたの幹に、幾つもの事業成果を実らせましょう。