コラム

孤独こそ、名経営者への道筋

突然ですが、あなたが経営者になろうと思った理由はなんだったでしょうか?

 

人間は本音と建前の生き物ですから、たとえ、本音の部分で「いやあ、それは秘密にしておきたいよ」というものがあったとしても、恥ずべきものではありません。

 

実際、経営者になられた方々と話ししてみると、コンプレックスがあった、という方は多いものです。

 

「学生の頃、いじめられていたんです」
「父親に否定ばかりされていて」
「生まれつきの持病があり、周りが普通にできることができなかった」
などなど。

 

理想を目指し、ネガティブなパワーを自分の糧に変えて前進してきたということは素晴らしいことです。

 

ですが、私たちはついつい、社会の「平均」というものを考えます。よく考えてみれば、そんなものはたかが平均、されど平均…

 

「平均」、それは非常に残酷なものとなりえます。

 

なにしろ、平均的であればスムーズにいくことも、少しでも平均から外れれば、途端に上手くいかなくなる。生きづらくなる。

 

(平均より上過ぎても、下過ぎても)この「生きづらさ」と、どう向き合っていくか、折り合いをつけていくか、どうしてもこの苦しみは、ついて回るものです。

 

ちなみにこれは、経営者としてのあなたに限ったことではなく、あなたの人生全体について言及しています。「人生と経営は切ってもきれない」、その境界線はないようなものだと思います。

 

なぜこんなことを申しますかというと、コンプレックスを払拭したり、理想を強く追い求めるという背景から、会社を起こして「経営者になる」という選択を選んだのならば、ぜひ報われるようになってほしいと思うからです。

 

もし、会社員として、組織の中にいれば、その組織の求めるルールに則り働くことを要求されますが、ひとたび自分が会社の長となれば”とりあえずは”、自分の歩みたい人生のため、自分自身の思うように生きることがスタートします。

 

ところが、経営者というのは、せっかくそうした道を選んだにもかかわらず、実は会社員よりも、よほど世の中からガンジガラメな場合が多いでしょう。2代目ともなれば、先代の作った道がありますから、はじめから自分の自由という感覚はないかもしれません。

 

◾️社会性に“飽和”しているとは?

 

思考の大半を事業においている為、それ以外のことを考える余裕は経営者にはありません。また、その必要性すらも感じ取ることができないくらい、経営者の日常は、意識は、社会と自社の二つの事柄で”飽和”しています。

 

「飽和」とはどういうことか、水と塩の関係でご説明してみましょう。

 

理科の授業のようで恐縮ですが、水温20度の水1リットルに対して塩が溶けこめる量の最大値が357グラムとされています。これが、水に塩が限界まで溶け切っている状態です。

 

では、あなたの意識が、会社のことで飽和し切っているとどうなるのか?

 

この水と塩の関係性を、人(水)と社会(塩)という構図で例えてみればわかります。

 

つまり、「社会」で飽和している人間というのは、社会に対して余裕がなく、客観性がなく、そして遊びもありません。

 

経営者は暇じゃない、そんなこと考えている暇なんてない、と思われるかもしれませんし、あまり考えたこともない概念かもしれませんが、ぜひ注目してみることをお勧めします。

 

それはなぜかと申しますと、社会に対してあくまで「適切な距離」を保って関係することは経営者にとって極めて重要なことと言えるからです。これは、あなた自身にとっても、その関係者にとってもです。

 

単にリラックスをしましょう、ではなく、ひどい緊張状態が続いているという方には「ちょっと肩の力を抜いて」ということもありますが、それよりも必要なのは、「経営者としての意識レベルを構築していますか」ということになります。塩水の飽和のたとえも、この「経営者としての意識レベル」に関わりのある話なのです。

 

人間として、経営者にとっての適切な塩(社会)の量をわかっていなければ、社長としての主導権がこぼれ落ちてしまう危険性もあるからです。

 

気がつけば、がんばっているのに周囲からの視線が冷たいように感じたり、上部だけのおべっかを使われるようになってまともに話が通じていなかったり、「なんか、思っていたのと違う状況になっていっている・・?」というふうに、自分自身を追い詰めることになり、正しく見返りを受け取れていない状態に陥ってしまうわけです。

 

それでは、本末転倒。

 

「自分自身の理想を掴む」という、あなた自身の掴みたかったものさえ、さらに遠のいてしまい、タスクの山とおべっかに埋もれてしまうのです。

 

それでは、人(水)と社会(塩)では、どのくらいの塩梅がちょうどいいと言えるのでしょうか?

 

◾️思っているよりも、あなたにはずっと大きな余白が必要?

 

人間の意識の何%を空間に開放して、何%を社会性に割り振るか。

 

例えるならば、その答えはちょうど「海水程度」のイメージとなります。海の塩水は1リットルあたり、だいたい35グラムの塩が溶けている状態です。飽和するまで、まだ9割もの余裕を残していることがわかります。9割も?と思うかもしれませんが、実際はそれでも海水はかなり塩辛く感じるのではないでしょうか。

 

この9:1というのは不思議なもので、宇宙空間における空間と物質の割合もまた、そういった割合で構成されているということです。

 

宇宙は圧倒的に空間が多く、星々は全体の1割に満たないのです。ですが、星は光っているために視覚的に、空間や余白より目立つのです。しかし、十分にスペースがあることが適切なバランスなのです。

 

有名でカリスマ性のある人のことを「スター」などということがありますが、スターの輝きもさることながら、より我々が注目すべきは彼らの持つ余裕のある態度、あり方の方です。

 

一方で、社会性に飽和しているということは、この逆を指します。常識やルールでガチガチになっているわけです。独自の方向性を持ったり、広く影響できるような一手を自信を持って打ち出すには、実際は9割の余白が必要になるのです。

 

あなたが正しく経営者としての力を発揮する上でも、社会性のその大半を空間に開放する勇気が求められるということです。

 

あなたが思うよりずっと、社長こそ、社会との距離感は離れている方がいいのです。俯瞰できればもっと遠くのことまでキャッチできる、面白いことができる、というわけです。

 

あなたの意識にも余裕はあればあるほどいい。

×資金に余裕があるから→心に余裕が生まれるのではなく、
○意識的に余裕を構築しているから→余裕のある経営状態となります。

 

しかしながら、忙しくしている方が安心だと思ってしまうので、なかなか抜け出せない。

 

人は、自分の人生に対して客観性を持つことが難しい生き物です。ですから、今できていなくても、問題はありません。そもそも、できている経営者はほんの少数です。

 

10人中、9人の経営者は知るよしもない社長の意識の要諦、というわけです。そのゆったりとした視点は「意識」の違いから生まれます。

 

まとめです。普遍的である本質は次のとおりです。

 

変化する社会に対して、客観的な立ち位置をキープできる、「広く余裕のある意識」を持った経営者こそ、その時流にふさわしい決断を流動的に下していけます

 

今日一日の仕事から、数年、数十年先を見据えた事業成長まで、その道筋に推進力を出すのは、一般的には事業計画や、その中で採用される各種の調査や戦略でしょう。もちろん重要なことです。そしてだからこそ、物事は「すべて相互作用」と理解して進むことが力になります。

 

優れた計画を立てるのは、明澄な意識であり、優れた意識を生み出すのは綿密な計画なのです。精神と物質は寸分たがわず、相互作用しています。

経営者は、孤独とよく言われます。

 

だからこそ、経営者は経営者同士で集まり、その中で情報共有をすることが多いものです。大切なことです。

 

しかし「孤独」という精神状態は、実に素晴らしいものです。ぜひ、これを機に孤独であること自体も活かしてください。

 

たまには「孤独を埋めることもあり」ですが、それをあなたの「孤高」として活用し、あなたが余裕のある経営者として存在することができれば、周囲からそれこそ星のような輝く存在としてのまなざしが強まることになります。

 

「うちの社長は他とは違うぞ」「頼りになる社長だ」あなたを中心として、信頼関係のあるチームづくりができれば、かつての孤独はいつの間にか違うものへと変貌しているはずです。

 

その先に、あなたの求める理想の姿が実現できるのではないでしょうか?おべっかではない信頼や尊敬、感謝のこもった言葉や態度が、社長をさらなる高みへと押し上げてくれるはずです。

 

そういった、あなたを中心とした一体感のあるチームづくり、組織づくりこそ、社長の取り組むべき優先事項ではないでしょうか。

 

あなたは社会に浸かりすぎていませんか?
経営者として、報われていると感じたことはありますか?

 

共有や共感によらず、社会全体を客観する視座はたった1人の一個人として育んでいくことを求められます。

 

政治家同士、経営者同士、会長同士、横のつながりを今以上に活かすにも、縦に孤独に、孤高に意識を伸ばすことが、中庸であり経営者として真のバランス感覚といえるでしょう。

 

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