コラム

〈コラム No.38〉社会の流れに和音を重ねる

「新妻先生、今日、一緒に高尾山を歩かせてもらって、瞑想もして、視点がガラッと変わったと言いますか、土台からひっくり返った気がします」

 

マーケターとして30年以上活躍されてきたFさんからのお言葉です。

 

つい最近までのFさんは

 

「私はマーケターとして長年やってきましたが、実際のところは”流行りモノ”にも疎いですし、これからますます最先端の技術が出てくる中、不安を感じています…」

 

とおっしゃっていたのに。

 

Fさんに限らず、最近は特にこのようなご相談をいただくことが多くなりました。人類は目下、シンギラリティに向かって年々テクノロジーの開発速度を早めています。

 

 

あまりにも次から次へとやってくる「最先端」にあっぷあっぷになっている…そんな方が実際のところはかなりいらっしゃるようです。

 

特に企業の経営者や、マーケターなど社会の動きをマクロ的視点で捉えていかなければいけない立場の方は、

 

この速度感に対して、どのように対応していけば良いのか、かなり意識を多方面に張り巡らせていると言えるでしょう。

 

しかし、いくら分析してみたところで、そもそも変数に何を入れて、何を除くことが正解なのか?

 

そこからして扱うべき事柄が膨大すぎて、とりあえずの表やグラフは出せるものの実際のところは「形を整えているだけで本質的なところは不透明」というままなのです。

 

これは数字がわかる人や、ある程度、社会的な「本音と建前」を使い分けることに長けている方ほど、本音のところで痛感していることです。ですからこうしてご相談を受けることが多くなっているというわけです。

 

2つの流れから3つの流れに考えた方を変えてみる

こうした方々に申し上げている例えの一つが「3つの川の流れ」です。

 

1.あなた自身の流れ
2.社会の流れ
3.宇宙/自然の流れ

 

です。シンプルな話ですが、多くの人々は2.社会の動向(流れ)を常に気にしています。  その「社会の流れ」に対して「あなた自身の流れ」がピッタリくれば「人生はうまくいく」と考えているわけです。

 

ところが、物事の真理は「三位一体」という言葉があるように実際には2面的なのではなく、3面的になっています。

 

そして、3.宇宙/自然の流れをあなた自身が考慮して生きていこうとすることが、他の1.あなた自身の流れと2.社会の流れとの間にも調和を作り出す人生の秘訣、というわけです。

 

本流と支流

流れという考え方をさらに細かく見ていくと、本流と支流という大きく分けて2つの流れが存在しています。

 

例えばあなたの体には静脈・動脈という本流と、毛細血管という支流があります。

 

同様に社会でも今回のように現在の本流的でメインの事柄と、支流的なサブの事柄があります。時代によってもこの流れは入れ替わることが多々ありますね。

 

同じように宇宙/自然もまた流れには本流と支流があります。太陽の光が本流だとすれば、惑星の光は支流という具合です。

 

さて、すでにお話ししたように、この「流れの概念」で重要なことは、1.あなた自身の流れ2.社会の流れ3.宇宙/自然の流れの3つともを考慮に入れるということでした。

 

この3つは密接に相互作用しており、それぞれがお互いを支え合っているからです。

 

この点で東京大学名誉教授で経済学者の宇沢弘文氏の提唱した「社会的共通資本」という概念は、一見すると社会というワードが入っているため2.社会の流れのことを述べているように思われがちですが、

 

本当は、2.社会の流れである資本主義経済の影響力が、3.宇宙/自然の流れに干渉しすぎないように、然るべきルールを敷くべきであるという考えに基づいていたのです。

 

このように私たち人間は、1.あなた自身の流れ2.社会の流れ3.宇宙/自然の流れのどの側面にも依存しており、これらを包括的に循環させることで豊かな営みを成立させることができます。

 

ですから、お察しの良い方ならもうお気づきだと思われますが、

 

この2.社会の流れに対して、あなた自身が適切に関わるためには、むしろ、それ以外の流れを捉えたり、学んだり、把握したりすることのほうが、実はものすごく役に立つのです。

 

物事には「流れに乗る」「流れに逆らう」という事実が存在しています。

 

そしてできることなら、あなたは流れに乗りたいでしょう。当然な話です。ですから、どんな流れがこの世界全体には存在しているのか、それを多様に感じ取っていくことが求められるのです。

 

いくら「社会の流れにうまく乗っている!」と思っていても、あなた自身や宇宙の流れに対して逆らっており、それが人生全体に摩擦を引き起こしていることがある、こんなことが起きる可能性は想像に難くないでしょう。

 

しかし、いくらあなたが個人的にそのような抵抗状態に置かれていたとしても、それはあくまであなたの流れなのであって、社会の流れがあなた個人に合わせてくれるようなことは非常に稀なわけです。

 

しかし、ここでまた面白いことですが。流れには本流と、支流がありますから、支流としての選択肢なら、実は思っている以上にたくさんの理想的な流れが存在している、ということもまた事実なのです。

 

あなたに合う流れを発見して組み合わせる

未来学者であり、デザイン・サイエンティストでもあったバックミンスター・フラーには面白い逸話が残っています。

 

彼は自分のことを「デザイン・サイエンティスト」と言っていたので当然、それを聞いた人は「なるほど、何かしらのデザインを生み出しているのだろう」と考えます。

 

しかし、実際にフラーは一度も何かを「デザインした」ことはなかったと言います。彼はデザインを作り出したのではなく、そのような構造/原理を宇宙や自然界の中から”発見”していたのです。

 

何かを「作り出す力」というのが重宝されている世の中です。しかし、一方で見落とされがちなのがこの「発見する力」なのです。

 

「発見」というのは、すでにそこにあるものを、「そこにあったのだ」と見つける、見出す力です。

 

今回の「3つの流れ」というテーマとこの「発見」を組み合わせます。

 

私たちは、「社会の中にある流れ」、「宇宙/自然の中にある流れ」、そして「あなた自身の中にある流れ」、の中からそれぞれ適切な流れを「発見」して、それらを「調整する」ことができればいいということです。

 

発見力の基準はあなた自身の流れ

この「流れを発見して、調整する」ことこそが私たち人間、一人ひとりの役割であると考えてみるとどうでしょう。

 

発見するためには、あなた自身がどのような感性や観察眼、洞察力を持っているか?ということがすべての基準になっていることがハッキリ見えてきます。

 

そして、こうした流れを発見する力を高めるために、瞑想や自然の中へ行くことを勧めているのです。

 

癒しや、ストレス解消という名目で登山やキャンプへ行くことは近年とてもブームになっています。もちろんこれはこれで良いことしょう。

 

しかし、実際に経営者やマーケターの人々は、「たかが癒やし」に対して、そこまですることに価値を見出せない方も多いはずです。癒しなら、それは都心でもいくらでも、そういったサービスはあるからです。

 

一方で、「流れを発見して、調整する力」を高めるために瞑想や自然を利用するのだとしたらどうでしょう。

 

私はしょっちゅう高尾山に社長さん達を連れて行きます。それはこのような理由があるからです。

 

修験道の聖地で1000年以上の歴史のある高尾山ですが、その魅力はなんと言っても1800種類以上の多様な植物と生態系がある点です。

 

これだけの「多様な生命の流れ」の満ちている場に入っていくわけです。そして、その中で、特別な瞑想を行うことで、ただの登山としての体験とは異なる深いレベルの「山が持つ流れ」に触れることができるのです。

 

つまり、高尾山の本流を発見することができる。

 

この「本流との出会い」が起きたあとは、ある意味、とてもスムーズです。なぜなら、本流には本流が持つ秩序があるからです。

 

これを「一流の世界観」と言い換えてもいいです。この極めて印象的な流れを捉えることができると、「そのように」生きたくなる。

 

親鸞は「他力に乗れ」という言葉を残しています。この言葉に補足を加えましょう。「他力」とは「大きな流れ」。つまり「本流」です。

 

よって、「大きな流れを発見して、それに乗っていこう」これが生き方のコツなのです。

 

まとめ

①世界には3つの流れがあります。1.あなた自身の流れ2.社会の流れ3.宇宙/自然の流れ

②流れにはそれぞれ本流と支流がある

③新しい流れを発見する力を養うことが重要

④「流れ」を発見できるようになれば、それに乗る/調整する、という選択肢が手に入る

⑤すべてのキーになっているのは、あなた自身の感性や観察眼、洞察力といった「あなたの意識」そのもの

 

社会と深く関わる経営者は、自然とも宇宙ともより深く関わることで、世の中を理解していくことができます。

 

自然をより深く愛し、社会自体をより深く愛し、その相互作用をより活性化させることこそが、経営者としての真の務めとなります。

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