コラム

〈コラム No.45〉事業継承後のあなたが考えるべき方向性とバランス感覚

「これが過渡期…というやつなんでしょうか?成果が出ていることにありがたいと思いつつ、次はどうしよう、という感じでモチベーションと言いますか、今後の方針がはっきりしないのです。」

 

親族外承継という形で現在の座についた2代目経営者のOさん。4年ぶりにスポットコンサルに来られた先般、ポロリと口をついて出たお話です。

 

「新妻先生、あれから、ガムシャラにがんばった3年間でした。

 

ところが、目標年商に達したあたりから、ある種の『もうやり切っちゃった感…』があって、まだ承継して3年しかやっていないんですが、どうもピンとこない。という状況です。」

 

これは、2代目社長にはありがちな話です。

 

はじめの段階として、先代の想いを受け、それを自分なりの頑張りで機動に乗せる。(これだけでも大変なことですが、今回はその先の話)

 

次の段階として、機動に乗った分、余裕が出てくるわけで、その余裕、つまり『余剰分のエネルギー』が生まれた時に、「さて、じゃあ自分なりには、これからどうしよう?」と

 

余裕が生まれた分、ぽっかりと人生全般に対するえも言われぬ疑問符が浮かんでくるというわけです。

 

O社長は「もうお金じゃないんだなあ、、」ともおっしゃられ、だからこそ、「新しい一手を」と考えておられる訳ですが、状況がそれを簡単に許すとは限りません。

 

そこを掘り下げて考えてみたときに、周囲の環境を思えばこそ、気持ちの面で「新しい試み」を試してみたい、と考えつつも、現状の運営体制、従業員、地域社会などの要素のことを考えたときに、新しい一手に踏ん切りがつかない、というのは当然と言えるでしょう。

 

元はといえば、このO社長、4年前はワケあって一度無職になられ、その際に当社にお越しになられたことからのご縁でした。

 

そこからご自分の軸を持って真摯に行動され、チャンスを掴んでこられたという実力の持ち主です。

 

そんなO社長だからこそ、運よく承継させてもらえたことの感謝は一入。にもかかわらず、出てきてしまった内面の「違和感」というものが、思わず口をついて出てしまったという具合です。

 

多くの経営者がやってしまいがちなことではありますが、こうしたすでに飛び出してしまっている余剰分エネルギーの流れを止めたり、押さえつけたりすることは実質的には不可能なことです。

 

当社は、「人生の点と点をつなげて線に変える」「人生の伏線回収」というニュアンスをコラム内で頻繁に用いていますが、これは、人が「一貫性を持って」長年一つのことをやり続けること自体が本来は”不自然”であるという主張です。

 

人間の理性は”一貫性”が大好きで、「30年以上一筋」などと書かれていると、みょうに説得力を感じてしまったりするものです。

 

しかし、そもそも、一貫性を持って長年頑張ってきたことで、ある程度の役職・肩書を持つに至ると、人間は葛藤を持つような構造になっており、ある種の「どんづまり感」は感じる時がきます。その期間が3年なのか、20年かかるかは個々によりますが、必ずです。

 

つまり、これは必然なのであって、ここを無視して強引に進もうとすれば、経営どころではなくなってしまう、ということです。

 

真面目で、目標に対して逆算思考でがんばれる経営者ほど、成果を上げやすく、だからこそ、成果を上げた後はある種の「虚無感」に苛まれているというのは案外多いものです。

 

外面的な従実さとは反比例するような内的な活力の減少…それを象徴するかのような早期リタイア。こういった現象は、社会にとって必要な考えや経験、影響力を持った人材がいなくなってしまうことでもあり、危機すら感じます。

 

ですからそうなるより先に、経営者がすべきこと。それは、自分の本質的な存在意義が、これからどんな方向性を欲しているのか?ここを精査できる力をあなた自身が培うということです。

 

重要な部分なので、もう少し詳しくお伝えするなら、何もすぐに「新しいことをチャレンジした方がいい」というわけではなく、そういった対外的な表現をする前に、ジャンプする前にいったん深く沈み込んでから、という順序のように、一度、「自分の本質的な領域に対する知性を深めておく」ということです。

 

もう少し言い方をシンプルにするのならば、「汝、自身を知れ」ということ。

 

自分自身という人間をこれまであなたが理解していたような形ではなく、より深いレベルで、把握し直していくのです。

 

そこに着手すると、日頃生まれていた「違和感」や、「虚無感」は、むしろ、あなたを次の人生フェーズへと誘う重要な方向感覚だったことが腑に落ちることになります。

 

ビジネスは「三方良し」だ、とは昔から言われている原理原則です。

 

ここまでのあなたは事業を承継し、地域社会に必要とされてきたビジネスを引き継ぐことで、社会貢献ができてきたかも知れません。が、しかし、 現時点ではすでに、その継いだ会社の代表である「あなた」という、組織の根幹だけが、三方良しの水準から下がってしまっているのではないでしょうか。

 

この時点でもう、「本当の三方良し」とはいえかねない状況です。地域社会、取引先、自社の3つがそろって三方良し、ですが、すでにその主軸である自社の経営者であるあなた自身が「よし、これだ!」という気持ちでいられない状況なのですから。

 

「どうにもこうにもモチベが…」という状態が続いておられるのならば、気がついていない水面下で「あなたの内的葛藤」が経営の邪魔をしているという他ありません。

 

そうなると、会社を引っ張るはずの経営者が、むしろ会社のお荷物になってしまう、ということもあり得る状況です。ここに価値をおけないと、組織体制全体に直接的な影響が出てくるのは時間の問題です。

 

「会社のお荷物が社長自身?」なんて、夢にも思わないかもしれませんが、適切な素早い判断ができていない、方針が定まらない、お世話になった恩義や罪悪感で…ということがある場合、ありえなくもないお話です。

 

しかしながら、焦ってビジネスコーチに相談するとなると、無駄足になったというのもよく聞くお話です。

 

理由はかんたんで、コーチなどは目標達成に特化されているからです。目標達成というのはこの場合、「目的」ではありません。つまり「一貫性」を推奨されてしまうのです。

 

ここを注意しておかないと、また次の目標を作って、それを達成できるようにコーチをして頂く、という流れになるワケです。「経営の仕方なら、自分の方がよくわかっていたよ」ということになりかねません。

 

内的なことに関して対処していく上で、コーチングは自発性を促してくれるため、一見、いいように見えるかもしれませんが、

 

内的なことを深掘りしても、結局は「売り上げを立てるしかない」と思ってしまったり、「もうビジネスは終わりにした方がいいのかもしれない」など、極端な感情に流されてしまう危険性があります。「自分の中にある答え」の数は、そう多くはないからです。

 

メンターにおいても、その人物独自の人生経験からの観点に偏りがちです。なんでも話せる人物、相談できる人物は、確かに頼りになるものですが、結局今の自分に照らし合わせると答えが出なかった・・ということになりかねない相手でもあるワケです。

 

お悩み相談では、参考になる部分が多い反面、自己研鑽、人生のフェーズアップにはならないという結果にもなりがちです。

 

一方当社は、共感や解消、感情に流されるような方法はとっておりません。

 

立場による悩みは解消できるものではないからです。そういった変えられない環境を、どうやって切り開いていくかに観点を置いています。また、一個人の経験談に終わることもありません。

 

聞いてもらってなんとなくスッキリした気がした、というような曖昧な相談ではなく、構造を理解した上で、状況に落とし込むことが実務としてできるようになります。

 

この道の専門家は探すのが大変難しいものですが、あなたが感じている本当の原因を長期的視座からロジカルに解説できる人でなければ意味をなさないことは明らかです。

 

その先の道筋への移行について、建設的な提案ができるコンサルタントを選ぶことが、必須となってくるのです。 清濁併せ持つ社長にこそ、割り切れない難しい環境・状況の中での絶妙なバランス感覚は必須になってきます。

 

まとめです。スタック感や過渡期をどのレベルで真摯に受け止めるべきかはあなた次第ですが、

 

あなたの今までの経験の「点」と「点」を線に変え、事業を継続的に発展させる視座を身につけることは経営者として極めて有益です。

 

貴社では、不測の事態に備えはあるでしょうか?事業へのモチベーション、考えることがあれこれありすぎて、判断が遅くなってはいないでしょうか?

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