「新妻先生、マットレスのサイズをシングルかセミダブルかで悩んでるんです。理由が少し言語化できてきたので、改めて先生にご相談したいと思いまして」
個別相談にお越しになったYさんとの一幕です。
もうすぐ訪れる3/21の春分点は「夢見」が活性化する時期でもあります。寝具を一掃して良いものを備えたいということでした。
「お部屋をスッキリと作ることを考えれば、シングルで決まりなんです。絶対今のお部屋に完全にマッチします。でも、セミダブルは多分少し景観に影響が出る気がして・・
きっと今使っているお気に入りのローテーブルもセミダブルを置くとなれば撤去した方がいいんです。
そのお気に入りのテーブルは使用頻度はあんまり高くはないのですが・・うーん」この言葉だけを聞いていると「それならシングルで決まりでは」だとか「家具屋さんやインテリアデザイナーの方にご相談すれば良いのでは?
新妻さんはインテリアの専門家ではないでしょう」と言いたくなってしまうかもしれませんが、よくよくお話を伺ってみるとそうではないことが分かります。
ここでのYさんの問題は決してインテリアではありません。もっとレイアーの高い部分で自分自身の「魂の希求」に耳をすまそうとしている。この部分を整理しに来られたのです。
魂からの希求とは?
Yさん「正直、セミダブルを置くところは全然お部屋全体のイメージができないんです。
でも、ただ一つ本当に“見過ごせない価値”として、スケール感、これが引っかかっていて。新妻さんもご存知の通り、わたしってあまりスケールが大きくないじゃないですか。
一点に集中して小さな範囲で動くタイプなんですが、だからこの「夢見の時期」にワンランクアップしたいと言いますか・・自分の持つエネルギーを拡大させたいというか・・」
新妻「はい、より大きな自分自身へ移行するために」
Yさん「少しお部屋に対して大きくても、セミダブルは許容範囲内のはずです。でもやっぱり大きいかな・・・とか、堂々巡りを繰り返しています…」
些細な問題にみえるかもしれませんが、ここでこの自分の中で引っ掛かっている基準を無視してしまうと、Yさんはある一つのものが失われることになります。
それはあなたが人生という物語の中で掴みたいと思っている部分そのもの。いわば、「魂の希求」とも言えるものです。
ここでついやってしまいがちなのは、目の前の合理性や直近の満足を優先してしまうこと。つまり本質的に自分がもっと重要視したいと思っている気持ちを疎かにしてしまうのです。
この場合でいえば、判断の基準がインテリアに偏りすぎてしまうこと、金額などです。
シングルの方が少し安いだとか、大きいものだから失敗しない方にしようという基準はもっともらしく聞こえるわけです。
ですがこれでは、判断基準のレイヤーが下がっていってしまっています。判断の基準値を下げれば、それは他者から見てわかりやすい基準になる場合が多いでしょう。
「サイズがちょうどいいだろうね」「安い方がいいよ」などと、背中を押されてしまい「まあ、そうだよね・・」という気にさせられてしまう。
しかし、この「希求」というのは判断基準のレイヤーを、高い水準でもって判断しなければいけません。目の前の「欲求」を満たすか、心の底から感じている「希求」を満たすかという話です。
もしも判断基準のレイヤーを下げた選択・判断をし続けるとどうなるのでしょうか。
あなたは「『ほんとうは一番大事にしたい』と思っていることに、耳をすましてくれない存在」として、あなた自身を認識するようになります。
当然ながら、普段の生活でしっかりとその違和感を振りかえり、理由を探ることは難しいでしょう。こうしてその違和感はあなたの意識の奥深くに少しずつ「蓄積」されていくのです。
これが進むと時間経過とともに、自分の選択にだんだんと自信が持てなくなっていく。要は、自分自身の本当に選びたいものを選んでこず、表面的に選ぶ癖がついてしまう。
「しっくりこない」
「自分の選んだものを大事にできない」
「信用できない」
という反応がどうしても出てくることになります。
さらにこれが進んだ時に、判断自体を自分ですることを止めてしまいます。
「一般的には」
「みんながそうしているから」
「安全だと聞いたから」
「あなたが決めて」
「○○さんがそう言ったから」
そしてその結果が悪ければ簡単に他人のせいにする。そもそも選択をみずから「放棄」してきていたのに、です。そのパターン化が積み重なり「人生の選択」も他人任せに、なんてことも惰性的に起こっていきます。
希求からのメッセージを受け取る方法
「希求」とはかんたんに言えば、あなたが「あなた自身に回帰するための情報」です。
ではどのようにあなたが心の底からの「希求」を選択をすることができるのでしょうか?それはあなたに日常から来ている繊細な違和感や、メッセージに耳を傾けしっかりと「思考」を繰り返すことです。
ここは重要なポイントなので強調しておきますが、十分に思考にエネルギーをかけること、熟考していくこと、シンプルですがこれに尽きます。
この思考を「まともに」するために、我々は「意識の醸成」を必要とします。よく「雑念を祓え」「考えるな」、「直感に従え」と言われますが、これを額面通りの意味で受け取ってはいけません。
より「深く思考する」「考えうる限りのことを考慮し尽くす」ためには、それなりの思考の濃度が必要になります。
思考するべくものを思考しきり、その棲み分けを明確化できればできるほど、欲求に駆り立てられるのではなく、「希求」そのものを的確に捉えたものを選ぶことができるようになります。
具体的に希求を選択するには2つの方法があります。
1つ目:今完璧な状態を作り出す方法
完全に完璧な状態にすることで、その完全な状態の満足感に、更に上位のものが訪れてくれるのを待つ方法。これには確実性があります。より大きなエネルギーを受け止められるだけの基盤作りとなります。
デメリットは「小さくまとまってしまい井の中の蛙」になること。
2つ目:不確定要素をあえて取りに行く方法
今見えている範囲の中でちょっと馴染みのない、良いものを取りに行く方法です。ちらでは調和は失われますが、ご自身にとっては「不確定要素」ですので刺激が加わりスケールの拡大というものにはうってつけです。
デメリットはチャレンジしすぎて大きくバランスを崩してしまう。
この2つには正解はありません。
どんな人生を選ぶかに正解はないのと同じように①でも②でもご自身が完全に納得し「人生」をあなた自身がコントロールしている、ということが重要です。
冒頭のYさんはこの2つの提案を聞くと「そうなんです、そうなんです、そこが言語化できなかったんです!」とパンと手を叩かれました。
「『きっと失敗しないだろう』と思うと、正直つまんないって思っていました。体が大きくはないので、寝るだけならきっとシングルサイズで文句は一つもないんです。
でも、その世界観のことはよく知ってます。だから、もっと違う動きをしてみたかったんです。その「不確定要素をとりにいく自分」に興味津々なんです!私はベッドじゃなくて人生の話をしたかったんです」
詰まりがとれたように晴れやかなお顔が印象的です。
新妻「夢見の達人ドンファンは不確定要素に突っ込んでいけ、といいますよ」
Yさん「それです!!そのポイントでした。行きます」
ベットサイズを選ぶ、という人生論
今完璧な状態を作り出すということは、平均点以上をしっかり作るいわば基礎作りに注力するという選択です。
そうすれば、その空間とあなた自身に、より高いクオリティを受け止めるだけの器を作ることになりますので、より安定した形で人生を発展させることができます。
対して「不確定要素」を選んでいくということは、自分のスケールを大きく拡大させていくことです。不安定なように思えて、この不確定要素の影響を受けるのは一瞬。
特に存在力が安定していると、この不確定要素を吸収し、自分自身をうまく成長させることができるようになります。「安定」させながら成長するのか「刺激」を与えながらエネルギーを拡大させるのか。
あとは好みの問題ですが、いずれにせよ、自分自身を飛躍させるために日頃から注意しておきたいポイントです。
不確定要素「自体」を欲していたYさんは、自分自身の希求に気がつき②「スケールの拡大」が今の自分には必要だとすぐに判断されていました。
「わかっているから安心」という世界と「わかっていないから不安」という世界だけではありません。
「未知数だから楽しみ」「知っているからつまらない」という価値観も存在しています。
Yさんは不確定な要素を楽しんでいく、という選択をスッキリとした気持ちでされたようです。
サイズの違うベットを選ぶことは、寝心地の良さを選ぶという単純な話ではなく、不確定要素を積極的に選ぶか、選ばないか?というまさしく人生論につながっていました。
Yさん「ローテーブルはお気に入りですけど、一旦しまっておいて、また使えるか考えてみます。いつかきっとこのふたつの要素がうまく組み合わさってくれるはず!」
新妻「大きなベッドがきっとYさんのエネルギー自体を拡大するはじめの一歩、許可証になるはずです」
Yさん「実はこのサイズの悩み、もう2年以上も悩んでいたんです。そのうちに、自分だけだと”どんな基準”で選んだら良いかわからなくなってしまって…
ですが今回お陰様で、「高い水準から判断できた」という確信が持てたので、まだ買ってもいないのに既に満足感がすごい(笑)」
今回はマットレスのサイズでしたが、このように表面化している迷いの奥に、実はあなたの次の方向性を見つける手掛かりは溢れています。
どんなに些細なことでも、「意識を遡るきっかけ」であると気がつき、見直すコツをつかんでいく、この視座を持って人生を展開できれば、あなたが深いレベルで必要としているものはなんなのか?を適宜、主体的に選んでいくことができます。
客観的に見直すことができれば、その内省は想像以上に、あなたを次のステージへ導く推進力になるでしょう。
あなたは自身の本当の希求に気がついていますか?
日常から送られてきているあなたへのメッセージに気がついておられるでしょうか?