「社長の傍で、彼の思いを汲もうと必死にやってきて、ついに当社は念願叶って一部上場を果たすことができました。社長は全体会議で『みんなのお陰です』と仰られましたが…
ああ、しかし私は、一言でいいから個人的に「ありがとう」と声をかけられたかったのです。新妻先生、今まで自分は何のために身を粉にして頑張ってきたのかなってフラフラになりました…」久しぶりにお越しになれたAさんからのご相談でした。※より理解しやすいように若干の変更が加えられています。
サッカーワールドカップも終わってひと段落し、一段と冷え込んできました。寒いとなかなか動く気にはなれないかもしれませんが、この時期をあなたは惰性的に過ごしてしまってはいないでしょうか?
クリスマスの陽気と年末の忙しなさのムードが漂っていますが、この空気に流されてはいないか、ということです。
ではどういった点で今年を振り返っていけば有意義なのか?というお話ですが、誰もが人に認められたいと思うものです。
まさに、このAさんは社長に認められようと身を粉にして働いてきた。しかし、その結果一部上場まで持っていったこのAさんの頑張りは目に見える形では評価されなかった・・少なくとも当人は傷ついておられるという状況です。
このようなビジネスシーンは実際、多くの方が目の当たりにしたことがあるのではないでしょうか?
ここで多くの人が勘違いしている点ですが、こういった人間関係で起きる問題は「相手(社長)がわるい」のでもなければ、「運が悪かったから」でも「あなたが無能だから」でもないのです。
この例でいえば、まさしく「承認欲求が基準」ということにこそ、問題があるのです。承認欲求が強ければ強いほど、他人からの評価の影響を強く受けることになります。評価されなければフラフラに、という具合です。
ここでもし、「自分のステージを上げたい」といくら真剣に思っていても、一方で心の奥底にある「動機の基準」が「承認欲求」であった場合、「上に上がりたい」気持ちと、現状の人間関係から「承認されたい」気持ちがバッティングを起こし、思考がフリーズしてしまう…ということが起こります。
そこで作用しているのは「惰性の恒常性」という法則です。
この惰性の恒常性というのは、なんでもオートマティックにその現状のレベルのみを旋回し続けることをいい、コンフォートゾーンや習慣のようなものと近いと考えて頂ければ良いでしょう。
「自分のステージを上げたい」と思っていても、それ以上の力で働いているあなた自身のコンフォートゾーンの惰性。結局これに乗ってしまい、いつもと同じ位置をぐるぐると回り続けてしまうという…これがあなたにはエンドレスに働き続けるということなのです。
このオートマティックに働き続けるエネルギーが「承認欲求」と癒着していたならばどうでしょうか?「認められたい」という領域の中であなたは永遠とぐるぐる、頑張り続けることになるのです。
厄介なことに、たまにこの承認欲求を満たすような出来事も起こりますから、ますます抜けられなくなります。
顕在意識では「この仕事で認められて、自分のステージアップをしたい!」と真剣に思っているのに、それが達成されることはほぼないわけです。これは恐ろしいことですよね。
では、どうしたらいいのか?
そこで鍵となるのが「承認欲求」という軸から「自己実現」という基準に切り替えること、となります。この動機のシフトは正確には、次のような段階を踏む必要があります。
①自己承認欲求を持っていることに気がつく
②そこから抜け出る覚悟を持つ
③自己実現をするんだという基準を持って生きる
やることは実にシンプルです。しかし実行に移そうとすると難しい。注意点を挙げておきます。
✔︎基準を変えてもすぐに戻ってしまう
理由:これまで「承認欲求の動機」によって生じた惰性は日常生活の至る所であなたに「お馴染みの位置」を指図してくるためです。惰性の恒常性が日常のあらゆる場面で毎回のごとく働きかけてくるので、「ステージを上げたい」という覚悟は虚しく、あっという間に元の場所に戻されてしまう。
そのため、これはよほど賢くこのエネルギー法則に打ち勝つ戦略をもって対処するか、死に物狂いになるしか手はありません。
多くの人が後者の「必死に取り組む」選択をしており、それでも構いませんが成功率は非常に低いです。
一方で「惰性の働き」に対して、的確にその傾向と対策を講じる術、「カウンターインテリジェンス」(惰性に対する対抗知性)といわれる戦略的な選択肢があります。
エネルギー法則や、社会的な影響力の中で賢く立ち回る方法全般を、このカウンターインテリジェンスでは扱うので、結果的に「惰性のエンドレス性」に打ち勝つ成功率はほぼ100%になります。
どちらにせよ、あなたはその「惰性からくる影響力」を相殺できるだけの強い意思力が問われることになるでしょう。他人の評価に依存しない、「自己実現の新しい動機」をあなた自身の中に生じさせることが必須となります。
自己実現のための「新しい動機」を得ることができれば「もう認められなくてもいい」(投げやりではなく、ニュートラルな意味)と、それまでの癒着した関係のすべてを手放すことができます。
この状態になることを恐れる人々は多いかもしれませんが、実際にはいよいよここからが自律した「自己実現への道」へとつながっていきます。ここで初めて、あなたが本来求めていた人生の醍醐味である「○○」(例えば自由、良縁、天職など)が手に入ってくるようになるわけです。
「惰性の恒常性」それ自体はポジティブでもネガティブでもありません。
ただシンプルにあなたが選んだもの、選び続けたものは惰性となり、やがて恒常的にあなたになんらかの強い影響を返してきます。
あなたはこの2022年、惰性を有効に使い、数多くの有益な習慣(恒常性)を身につけることができたでしょうか?それともネガティブに惰性に翻弄されてしまったでしょうか?
冒頭で、12月はクリスマスの陽気と年末の忙しなさのムードが漂っているというお話をしましたが、この習慣自体もまた世の中の惰性なのです。この空気に飲まれていては、あっという間に時が過ぎ「自分は何も進歩がなかったのではないか」と突然不安を感じることになります。
心の奥底にある「承認欲求」と「惰性の恒常性」を作り出しているあなたの日々の選択について振り返ってみると有意義でしょう。
ご相談くださったAさんはこのステージを駆け上がり、早速行動に移されています。そうした方から見える景色が変わっていきます。
あなたは惰性に流されるのではなく、あなた自身が意図的に有益な惰性を創造する「主体的な道」を歩もうとされていますか?