【目次】
◾️ティール組織、実は組織論ではない?
「新妻さん、ティール組織を研究しているのですが、全然“的を得た”話ができる人がいません。ティール組織って実際どういったものなのでしょうか」
先日、こんな話題をある経営者の方から振られました。数年前に流行ったティール組織ですが、実際のところはうまく落とし込めずに当時はティール組織化にチャレンジしたものの結局空回りをした企業も多かったようです。
そこで今回はティール組織のそもそもの話です。フレデリック・ラルーの作り出したこの言葉「ティール組織」とは“組織”という名前がついているので、そういったビジネスのチーム編成のあり方に意識が行きがちです。が、その実態は違うと私は考えます。
◾️ラルーのメッセージの中核とは?
実際ラルーはこう述べています。
「人生をかけて何をすべきか?とか人生の目的は何か」ではなく、「『人生は私に何をしてほしいのか』にできるかぎり耳を澄まし、確信があるものを選んできました」
「“私を通して生きたいと思っている人生”に対して素直に耳を傾ければいい」
次にリーダーに対して、「『この組織は何を心から望んでいるのか?』『どこに自然と行きたがっているのか?』を聴いてください」と伝えています。
このラルーの言葉をよくよく読んでみると、確かに“組織”という言葉を使ってはいるものの、実はティール組織とは組織論ではなく、もっと個人的な“リーダー論”であることが見えてきます。
ラルーは瞑想やチャネリングにも精通しています。ですからビジネスだけの視点で本を読んでしまうとラルーの言っている包括的な意味を汲み取れず、結局、自社改革の取り組みも前に進まなくなっていく。これが一つ大きなポイントです。
元々マッキンゼー出身のラルーは、ティール組織の本の中で、非常に分かりやすい色分けの指標を用いて、人類が所属してきたタイプ別の組織図を示しました。あの指標は分かりやすいですし、整理されるので、そこに納得してしまいがちです。
ですが、経営者はティール組織の本のわかりやすさと、実際にラルーが講演で述べていることとの間に、かなり開きがあることに気が付く必要があります。実際にラルーが話している内容は、まず個人としてリーダーが自分自身の方向性を←人生の側から教えてもらう、ここを強調しています。組織づくりの話ではなく、あくまでリーダーの人生に対する態度の話。
ここでラルーの言葉に戻ると
「今、私にとって何をすることが最も意味があるだろう?」実際にラルーが最も強調したかったポイントがこの箇所でしょう。
◾️ジョブズが解雇されたの単なるはわがままだったから?
“意味”という概念をラルーは自身の動機の根幹において、その起点から物事の順序を思考することが重要だと述べています。ここですぐに「じゃあ、組織として社会的に意味のある活動をすればいいんだ」という連想に行きがちですが、これは早計です。
ポイントはあくまで、リーダーが個人的に、自身の中で意味と意義を感じられる方向性を自己理解、自己探究、醸成することにあります。
おそらく、これは私の予想ですが、ラルーは自身の概念が少しでも世の中に受け取られやすい形にするためにあえて“組織”というビジネス用語を自身の理論に抱き合わせたのでしょう。ですがその本質はあくまでリーダーがまず個人単位の規模において、最も意味深く感じる方向性を嗅ぎ分け、その方向に向かって素直に舵を切っていくことにあります。
もちろん、リーダーが個人的に意味を感じる方向性でも、それに対して組織がその意図を理解できないことは往々にしてあるでしょう。スティーブ・ジョブズが一度はAppleを解雇されたように、こういったことは歴史的事実として起きています。
ですが、ここでジョブズがただのわがままな人物だったから解雇になったのか?それとも、真の意味で彼は「意味」を追求しようとしていたのか?ラルーの述べるティール組織の世界観。
ジョブズの残してくれたThink differentやStay Foolishといったメッセージ。
経営者ならこれらの素材の有している本質的な側面を紐解く必要があります。つまり「“組織の価値観”と“私自身が個人的に最も意味を感じる基準”とをどう捉えていけば良いのだろうか?」という問いを積極的に自身に問う姿勢。
経営者は自分の中に、通常なら考えてはいけないことをあえて考え続け、積極的に葛藤を抱くことが求められます。そうして自分自身の存在意義を変成させていくのです。
次回はこの辺りのことをさらにお話しします。
・3月18日(金)満席
・3月25日(金)19:30~22:30 オンライン 【5名限定】