「先生の言ってることはごもっとも・・すごく合理的だと思うのですが、自分の中の何かがピンときてなくて・・」クライアントのNさんが、随分前に個別相談にいらしたときの一言です。
Nさんはかれこれ数年、独立と人生のステップアップを考えていらっしゃったということで、目つきも真剣そのものでご相談に来られました。
当社セミナーにいらっしゃった時、頭では合理的と思う反面「感覚的にピンとこない」「ピントが合ってない感じがします」と、それが引っかかっていたということでした。
私はこう答えました。
新妻「それはそうでしょうね」
理由は簡単です。
Nさん「なぜですか？」
新妻「Nさんには私のお話ししている“概念”そのものがないんですよ」
「概念・・ですか」
Nさんは更にピンと来ないという顔をされています。
「ピントが合わない」はあなたに合わないものではなく、そのフォルダがないからである
「ピントが合わない」ということの背景には「概念を持っていない」という物事のベースがあります。要は、あなたの中に理解するだけの「情報」が不足しているという状態です。
法律家に法律のことを聞けば十分な意見を聞けるものですが、法律に関心のない人間に話を聞こうとしても、そもそもその「概念」（前提情報）という受け皿・フォルダを持っていません。これではまともな意見が返ってくることはないでしょう。
むしろ、大体の人間は「普段聞きなれない話」を振られただけでまともな思考を放棄し、スルーをしてしまいます。このように概念を持っているか、いないかによって、ピンとくるこないかははっきりと分かれます。
ですから、よく「ピンとくるものだけを選んでます！」という方はいらっしゃるのですが、これは一歩間違えば、大変危険。自分自身の持っている概念（受け皿）をアップデートせずに、何も学ばず生きていきます！と宣言しているようなものなのです。
概念を取り入れられない人生とは？
新しい概念を取り入れられないということは、いつでもどこでも「すでに持っている」自分の概念から外から来る情報を解釈しようとすることになります。
この場合の「すでに持っている概念」とはいわゆる「一般的な考え方」「ステレオタイプ」「並の〇〇」といった概念です。
こうした「平均的な概念」が作りだす結果はもちろん平均的な「あるあるの結果」です。これは結果というよりも実際はむしろ末路…といった方がいいものです。
一般的な概念しかないのですから、一般以上でも以下でもない「凡」に収まる。例えばこちら
・肉体は、冷たくこわばり、病気がちに
・精神は、閉塞的、独りよがり、鬱的に・・
・親や子とは、仲が悪く、軋轢が絶えない
・時間は、ムダが多く、創造的ではなく、浪費的に消耗されます
・仕事は楽しくなく、生活のために仕方なく
こんな状態は一般的ではなく、かなりひどい状態では…と感じた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この５つの中のすべてとは言わなくても、一つや二つ思い当たる節があるのが、まさに「一般的」というものです。
「箱の中にある沢山のミカンのうち、一つでも腐っていれば、実はほとんどが…」と言われているように、もし、これらの５つのリソースの「どれか一つ」でもうまく活用できていないとすれば、それは次第に他のものにもその状況は広がっていってしまいます。
マタイの福音書第１３節には
「富める者はますます富み、貧しき者は持っている物さえ取りあげられる」
とあります。
これは、あなたの持っている「概念」が、あなたの持っている一つのミカンを腐らせるような概念だとすれば、それはやがてあなたの持っているもの「すべて」を腐らせるということを表現した言葉です。
本来は「恩恵」として与えられているせっかくの肉体や精神、親といったリソースを“現状”のあなたの持っている「概念」では「活用」することができません。
よって「状況を変えたい」というあなたの意志はまるで「焼け石に水」の如く、あっという間に消えてなくなってしまいます。
はじめはさほど気にならなかったはずのことが問題に発展し、その問題の解決自体に、なし崩し的に今持っている分のあなたの大切なお金や時間すら削がれてってしまうことになるのです。
まさに、概念一つで【お金・キャリア・健康・愛】を時間経過と共に失っていく。ここまでくると、リソースが“敵”になっているとも言えかねない状況です。
有益な概念を選ぶ
ではどのようにしてあなたの大事なリソースを「恩恵」として活用することができるのでしょうか？
まずは、あなたの中にある概念自体を「自分に最適なものに再構築する＝デザインできる」ということをしっかりと知っておくことです。
つまり無意識的に使っていた概念に気がついて手放し、主体的にあなたにとって「有益な概念」を採用するのです。
現状あなたが持っている「メインとしている概念」とは、一般社会から押し付けられた概念です。その流入先はマスメディアであったり、両親であったり、集合意識から影響を受けてきたものです。
あなたが主体的に選んだものではなく、無意識的に取り入れてきたにすぎません。
あなたの持つ「概念をデザインする」というアイディア
そこで、まずは「デザインとは何か？」ということ自体を考えてみましょう。「優れた概念としてのデザイン」に再定義してみるのです。これは非常に大切な部分です。
「複数の原理を相互に調整し秩序づける行為を私はデザインと呼ぶ」
思想家、デザイナー、構造家、建築家、発明家、詩人/バックミンスターフラー
これが「デザインという概念」の極めて優れた定義、いえ、“便利な”定義といえます。あなたはピンと来ていますか？それともピンときていませんか？どうやらオシャレ、カッコいい、といった「一般的な概念としてのデザイン」とは違うようです。
シンプルにいえば「良いデザイン」とは、関係性において「結びついているお互いが良くなっていくもの」を指すということです。
・あなたと仕事の関係を良くするための概念、これをデザインする
・あなたとお金の関係を良くするための概念、これをデザインする
・あなたと○○（好きなものを当てはめてみてください）の関係を良くするための概念、これをデザインする
というわけです。
もし、フラーの言う”デザイン”を、あなたが「概念において活用」していくことができれば、あなたの「選び直した概念」は、日常において、それらと紐づいた仕事、プライベート等を相互に調整し続けるようになり、あなたの人生そのものを豊かに発展させていってくれるということです。
要するに良い概念はオートマティックに人生を発展させてくれる、ということ。
「富めるものは、ますます増える」つまり、「富める概念が、ますます富を生み出す」パターンを作りだす。
だからこそ、生産性の高い行動をするには、その前提となる「優れた概念」をあなたがデザインできている必要があります。
また、意図的にデザインされた概念同士によって「意識が拡大」していくということが起きます。そうなれば、徐々にあなたが物事の全体像を把握していく俯瞰能力も高まっていきます。ここまでくると完全にあなたの中に“便利な概念”は有益化したということ。
以前まで「ピンときていなかった」未知の「有益情報」に対して新しい概念が「受け皿」となって「ピン！」とくるようになる。
「今なら理解できる」と重要な情報を汲み取るだけの抽象意識ができあがったというわけです。皆さん「もっと早くこれをやっておけばよかった！」と口を揃えて仰るわけです。
お金・キャリア・健康・愛、その先の概念
ところで、【お金・キャリア・健康・愛】に関することは、ずっと関心を集めてきました。要するにこのジャンルにのみ「ピンとくるような概念」を世間から与えられてきていたということ。まるでそこに絶対の幸せがあるかのように、です。
「しかし、これは幸福のほんの一部に過ぎない」そう言ったらどうでしょうか。そうは言っても今は「ピンとはこない」かもしれません。
ですが、本質的に人間は「世界全体との相互作用を通じて意識を拡大」させていくことを望んでいる。この「全体性へ向かっていく」ことこそが真の幸福、という概念もあるのです。
そしてその生き方を実践し【お金・キャリア・健康・愛】だけを追って生きている人よりも遥かに楽に豊かに生きている人たちも少なくありません。彼らがなぜ豊かなのかというと、説明してきました通り「問題解決にリソースを割く必要がない」からです。
あくまで、生産性を高め、関係者との相互発展・成長が起きていく。そういった生き方です。
起業の夢を叶えたNさん
私は当時、冒頭のNさんにホワイトボードを使ってこのような説明をさせていただきました。
それまで食い入るように真剣な目つきで静かにうんうん唸りながら聞いてらっしゃったNさんは「わかりました」というと
「私は・・起業塾に何年も通っていながら堂々巡りを繰り返してきました。でも他のもっと自分にとって必要だったはずの情報をキャッチするだけの、器のようなものが私の中になかったってことです・・よね？」
「その通りです」私は答えました。
「ずっと、このまま何もできないんじゃないかと思って、独りで勝手に塞ぎ込んだりしたこともあったんです。その答えがようやくわかりました」
すっきりとした面持ちで次へのステップを歩まれたNさん、なんと数ヶ月後には瞑想によるメイン概念のデザインと並行し、念願だった美容系の事業の立ち上げを行っていました。
「どうですかその後は」
「いやー起業って大変ですね！」
画面越しに元気な返事が返ってきます。
「お忙しいとワークは大変だと思いますが」
と、私は言います。
Nさん
「あ、でも不思議と疲れにくくなったんです。なんか軽くなったというか」
新妻
「体重計では計れませんが、“概念自体にも重さ”がありますからね。これまでの概念では重たくてやってられなかったのでしょうが、もっと「軽い概念」を意図的にデザインできるようになられた。そう感じられていることがすごいですよ」
私は心からそうNさんにお伝えしました。
「思考は現実化する」とはよく言われますが、「概念がないと思考はされず、現実も何もない」のが実情。
あなたの人生の中で「スタックしている面」があるとすれば、すでにあなたの中に腐ったミカンがあるのかも知れません。
あなたはこのままで本当に大丈夫でしょうか？